今日の雑学
2012年3月、初代「のぞみ」の車両(300系と呼ばれている)が引退した。技術革新にともない、新幹線の変遷も急速だ。だが、最近の新幹線を見ると、皆アヒル顔をして ▼ いる。アヒルのようなマスクを採用した理由には、もちろんスピード対策もある。しかし、それ以上に重要なのがトンネル対策だ。「団子鼻」をした昔の新幹線「ひかり」が時速300キロでトンネルに突入すると、トンネルの出口で「ドーン」という爆発音がしてしまう。逃げ場を失った空気が車両の前で圧縮され、衝撃波となって出口側に伝わり吹き出すからだ。これをトンネル微気圧波というが、車両が通過するたびに爆発音がしては、沿線住民に迷惑である。この騒音問題を解決したのがアヒル顔なのである。トンネル微気圧波をなくすには、列車の先頭形状を鋭(するど)くし、空気の逃げ場を作ればいい。そこで登場したのがジェット機のようなスマートな先端を持つ、500系と名づけられた「のぞみ」。しかし、これはスマートであるがゆえに車幅(しゃふく)が狭(せま)いという欠点があり、鉄道ファンには人気があったが事業者には不評だった。そこで登場したのが700系「のぞみ」である。サイドを削ってアヒルのくちばしのように平べったいデザインにすることで、トンネルに入ったときに空気がくちばしの脇から逃げる。こうして、トンネル微気圧波の発生を抑えることができるのだ。先頭が平べったくなったおかげで、列車の幅を広くとれ、狭さも解消した。このようなアヒルのくちばし型をエアロストリームと呼ぶが、最新の新幹線車両はさらにそれを発展させたエアロ・ダブルウィングと呼ばれる形にリファインされている。新幹線が速くなるにつれ、「アヒルのくちばし」はさらに改良されていくのである。このように、新幹線車両は騒音対策を常に優先している。これは、人口が密集した日本の宿命(しゅくめい)といえよう。フランスのTGVなど、他国の高速鉄道との大きな違いの一つだ。
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